2015年05月26日

箸の使い方


いま私はパリに住んでいます。パリにはサンタンヌ通りという日本食屋さんが並ぶ場所があり、お寿司・ラーメン・カレーライスから、いわゆる日本風の中華料理や定食まで大抵のものはそうしたレストランで食べることができます。私の勤務場所はサンタンヌに近いので、よくそこまで歩いて行って昼食を食べます。お昼時にはどこも賑わっており、複数人で食べに行くときは少し早目に行かないと席が取れないくらいです。この辺りにはオペラ座やルーヴル美術館などがあるので観光地としても有名ですが、意外なことに、どこもお客さんの半数以上がフランス人です。そして、みんな箸の使い方が上手なこと。フランス人の親日ぶりを感じさせる一面です。

フランスでは子供を連れて外食することを頻繁にしませんので、彼らはみな、大人になってから箸の使い方を覚えたのでしょう。その使い方に多少ぎこちなさがありながらも、スプーンやフォークなどを使わずに器用に日本食を楽しむ姿は、生まれてすぐに親から箸の使い方を教わり、当たり前のように毎日箸を使う私たち日本人からはどのように見えるでしょうか。

彼らに対して「人差し指が浮いている」とか「正しい持ち方はこうだ」とかいちいち指摘して矯正することはしないと思います。もちろん、本人から教えてほしいと言われればそのようにすることもあるでしょう。しかし、箸を使うことの目的は、食べ物を口に入れるということであり、その目的が達成していればあまり細かいことは気にしなくてもよいのです。逆に、橋の正しい使い方に気を取られてばかりいたら、日本食を美味しく楽しむどころか、苦痛になってしまいます。

英会話も箸の使い方と似たようなところがあります。英文法を気にし過ぎたり、小慣れた言い回しを意識し過ぎたりして、コミュニケーションの中身がおろそかになっていませんか?英語を普通に話す相手から見れば、正しい英文法や気の利いた言い回しなどあまり気にしてはいないでしょう(はっきり言ってしまえば「興味がない」)。むしろ、話し相手があなたに求めているのは、話の中身だと思います。私の経験上から付け加えるならば、話のテンポは大切です。テンポの悪い話し方は、相手のスムーズな理解や思考を妨げるからです。

そうはいっても、会話として成立するためには最低限の英文法は必要です。よく英会話上達の指南書などで「中学から高校1年くらいのレベルを勉強すればよい」などと書かれているのはそういうことだと思います。
実際に外国人と話す機会を作って、より多くの実践を積み独特のテンポを体得し、そうして初めて状況に応じたニュアンスの違う伝え方や洗練された表現を少しずつ覚えて行くというのが自然なプロセスだと思います。



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posted by 薗田真澄 at 16:47| Comment(0) | 英会話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月23日

ハードウェアとソフトウェア


あなたはこんな経験をしたことがありますか。

オンライン英会話で講師とフリートークをしようと思ったら5分と持たなかった。相手の言っていることがよく聞き取れないし、思ったように英語で話せない。時間が経つのがやけに遅く感じてレッスンが終わるのが待ち遠しかった。あのバツの悪さといったら・・・次回のレッスンの予約を入れるのが怖い。

そして、自分の英語力のなさを嘆き、しばらく英会話から遠ざかります。私もこのような経験を何度したことでしょうか・・・。

しかしよく考えてみて下さい。

あなたは本当に「英語力がない」のでしょうか?会話が続かなかったのは、「英語を聞き取れなかった」「英語を話せなかった」のが原因でしょうか。原因を分析することは大切なことです。お医者さんだって、患者の症状をみて病気の原因を特定できなければ、適切な処方箋は出せません。


この問題を、スマホとアプリの関係にたとえてみましょう。(スマホを使ったことがない人はDVDプレーヤーとDVDの関係を想像してみて下さい。)

スマホには電話・インターネット・音楽・ゲームなどに対応できるよう様々な機能が搭載されています。しかし、これらの機能を活用するには、アプリがインストールされている必要があります。逆に言えば、アプリがインストールされていなければ、どんな優秀な機能を備えていたスマホであろうとそれはただの物体に過ぎません。電話やインターネットのブラウザなど、スマホを購入した時に初めからインストールされているアプリもありますが、利用者自身がアプリをダウンロードしてスマホをカスタマイズしなければならないのです。

要するに、スマホの機械がハードウェア、アプリがソフトウェアということになります。英会話では、ハードウェアに相当するのがあなたの「聞き取り能力」や「会話能力」です。では、ソフトウェアに相当するものは何でしょうか。それは、会話の「トピック」や「内容」と言えるでしょう。であるとすれば、あなたが中身の薄い話を完璧な英文法で流暢にしゃべっても、英会話は長持ちしないでしょう。逆に、あなたの英文法がメチャクチャで、たどたどしい話し方であっても、その内容が興味深い話であれば相手は必死に聞き取ろうとしたり、質問をしたり、話題をふくらませたりするでしょう。


この話をしたのは、あなたに「もっと興味深い人になれ!」と言うためではありません。それはそれで必要なのかもしれませんが、ここで強調したいのは、英会話を訓練する上であなたが陥るスランプに対処するためには、スランプの原因をよく考えてみるべきだということです。


あなたの英会話の上達を阻む最大の敵は、「自分は英語ができない」「どうせ相手に伝わらない」などと自己暗示をかけてしまうことです。したがって、あなたの英語力が原因だと決めつけることは危険です。冒頭の例で言えば、相手の知りたがっていることは何かを想像しながら、ほんのちょっとの準備をすることで結果は変わったかもしれません。もうお分かりかも知れませんが、英会話の上達の秘訣の一つは、あなたが今までに国内で経験した対人スキルというものを総動員することなのです。



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posted by 薗田真澄 at 18:20| Comment(0) | 英会話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月13日

背伸びをしない

あなたがもし誰かにメールを送ってほしいとき、英語で何と言いますか?
いろいろ表現の仕方があると思いますが、私が真っ先に思いつくのは次の2つです。

1. Please send me an email.
2. Could you send me an email?

あなたは、この2つの文章のニュアンスの違いが分かりますか。

1. Eメールを送ってください。
2. Eメールを送っていただけますか。

1が直接的な言い方であるのに対し、2では仮定法のcouldが使われることによって「もし可能であれば」とか「もし差支えなければ」というニュアンスが加わり、より遠回しで丁寧な表現になります。英語には日本語のような尊敬語や謙遜語はほとんど存在しませんが、表現方法を使い分けることによって相手に与える印象やニュアンスを変えることはもちろんできます。

しかし、この話を聞いていきなり途方に暮れる必要はありません。まずは、あなたが外国語として英語を使用する時にこうしたニュアンスの違いにまで気を配る必要があるかどうか、今一度考えてみてください。

プライベートでの外国人との交流、海外留学、そして、ビジネスシーンも含めて、大抵の場合は必要ないはずです。
※ただし、あなたの言葉遣いがビジネスの取引に影響する場合(例えば、ショップの店員として外国人のお客さんに対応する場合など)は注意が必要です。

どうしてでしょうか。

それは、相手があなたのことを「母国語でない言葉を話す人」と捉えているからです。

逆の立場を考えればもっと分かり易いかもしれません。例えば、あなたが街を歩いている途中で、知らない日本人から
「東京タワーはどこにあるの?」
と突然タメ口で聞かれたら、答える前にむっとしますよね。

でも、外国人の観光客から
「トウキョータワー ハ ドコニ アルノ?」
と聞かれたらどうですか。
タメ口かどうかはさておき(笑)、相手が何を聞きたがっているかに注意を傾けますよね。

このように、ネイティブスピーカーは、外国人と話す場合に一定の寛容さをもって接する傾向があるのです。ですから、英会話の初・中級者はこれに甘えて(?)ニュアンスの伝わり方など無視すればいいのです。むしろ、伝えたいことがきちんと相手に伝わっていることの方が大事です。

上記の例で言えば、「誰かにものを頼む場合は必ずCould you〜で始める」くらいに決め打っておいた方がいいかもしれません。そうすれば、そこで迷いが生じないお陰で英会話にテンポよく対応することができるかも知れないのですから。

その意味では、初・中級者のうちは、小慣れた表現は極力使用せずに、平易な表現を愚直なまでに使い続ける方がベターかもしれません。そうすることで相手がそれに応じた目線で対応してくれることが期待できるはずです。背伸びをせず、身の丈に合った言い回しを使うことによって、相手へ「私は英会話初級(中級)者です」というサインを送りましょう。



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posted by 薗田真澄 at 17:18| Comment(0) | 英会話術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする